「普通」であることが誇らしい、iPhone 14 長期使用レビュー

ケータイ

iPhone 15シリーズが間もなく発売になりますが、その前に1年使ったiPhone 14について思うところをつらつらと書いていきます。

わざわざ書かずとも……ですが、念のため書いておくとiPhone 14はiPhone 14シリーズを構成する4モデルの中では最もスタンダードなモデルです。
約6.1インチの有機ELディスプレイ(Super Retina XDRディスプレイ)に画面の一部の欠けた「ノッチ」を備え生体認証「Face ID」に対応、約1,200万画素の広角・超広角の2カメラ構成など、iPhone X以降に登場したホームボタンのないiPhoneとしてはスタンダードな仕様・機能を有しています。

筆者としては2020年発売のiPhone 12 Proから2年ぶりの買い替えで、2年の間隔があればプロモデルからスタンダードモデルへの買い替えでも不満はでないだろうと考えての選択でした。
このあたりも含め、果たしてProからスタンダードへの買い替えが成功だったのか、失敗だったのかもiPhone 14の評価として、ここからはレビューをお送りします。

とにかく「普通」だったiPhone 14

iPhone 14を1年使っての感想は「普通」と評する他ありません。

iPhone 14シリーズで初登場した「iPhone 14 Plus」は大画面モデルながら軽量という特徴がありますし、iPhone 14 Pro・Pro Maxはノッチに変わる「Dynamic Island」など外観やUXの面でも今までにない要素があり、どれも手に取り使えば「新しい」と感じられる部分があります。

しかしiPhone 14にはそれがありません。至って普通です。普通以外の感想が出てこないのです。

iPhone 14とその前に使っていたiPhone 12 Proを比較してみると本体サイズもほぼ同じ。重量は15gほど軽くなっているので最初こそ「少し軽い」と感動はありましたが、それも数日もすれば慣れてしまいます。
手に持ったときの感覚に新しさはほぼないと言っていいでしょう。

性能についても日常使いでiPhone 12 ProよりiPhone 14の方が優れていると感じる部分はほとんどありませんでした。
これはiPhone 14に搭載されたSoCが最新の「A16」ではなく、2021年に登場したiPhone 13シリーズに搭載されていた「A15」となり、iPhone 12 Proの「A14」からは1世代しか進んでいないことも理由にあるかもしれません。
昔ほどAppleも前年のモデル比でここまで性能が向上したと謳っていないため、1世代くらいでは大幅な性能の向上はないのは当然と言えば当然です。

ただ、これらをネガティブに評価はしていません。買い替えても今まで通りに使えることは、買い替えにおける最低条件です。
もちろんiPhone 12 Proを使い続けて3年目になれば、3年前のモデル故の不満が何か出ていたかもしれませんし、iPhone 14に買い替えたことでそうした不満が出ないで済んでいたのかもしれません。
そんなことを考えていくと「普通」をそのまま新しいハードに更新しても使い続けられるのは正解の買い替えだったのかなと感じています。

カメラもやっぱり「普通」

iPhone 14のカメラは広角・超広角の2カメラ構成。画素数はどちらも約1,200万画素です。
iPhone 12 Proと比べると「2倍の望遠カメラがない」とか「LiDARセンサーがない」などダウングレードになる部分もありますが、メインカメラの広角カメラにおいてはiPhone 14の方がセンサーサイズが大きい、レンズが明るいといったアップグレードもあるため、もっとも使うカメラにおいてはiPhone 14の方が優れています。

が、実際に撮ってみるとそんなに違いは感じません。最近のスマートフォンのカメラはソフトウェア・AIに頼っている部分も大きいので当然といえば当然なんですが、良くも悪くも「面白みがない」のがiPhone 14のカメラです。

そんな面白みがない、普通のiPhone 14のカメラ作例をご紹介していきます。

まずは昼間の作例から。
これも正直特筆すべき部分はありません。実にいつも通りのiPhoneのカメラだな、という感想しか出てきません。
曇天の東京駅の作例では撮影時に必要があれば自動的にHDR撮影が有効になるスマートHDR 4の効果なのか、肉眼で見るよりもグッと空のグラデーションや駅舎の影の部分が持ち上げられている点は現代的なスマートフォンのカメラらしい写真ともいえるかもしれません。

続いて夜景の作例。
最後の作例のみ三脚固定でナイトモードを有効にし撮影しています。

iPhoneもナイトモードを始め夜景や暗所での撮影性能は以前より向上していますが、Androidスマートフォンと比べると手持ち撮影での撮影で「どこまで明るくなるよう頑張るか」は劣っています。もちろん肉眼で見るよりも明るく補正されていますが、補正の程度は他に比べるとやりすぎない程度に抑えている印象です。

また2枚目の作例、特に広角側ではイルミネーションの反射によるゴーストが出てしまっています。iPhone 11シリーズ以降ずっと改善されないiPhoneのカメラの弱点はiPhone 14でも健在です。

スマホで撮ることが多い「メシ」。
屋内はどうしても明るさが足りない、暖色のライトの色に引っ張られてしまう傾向にありますが、iPhone 14のカメラはどちらにも負けず検討してくれています。
好みもあるとは思いますが、筆者としては派手過ぎない発色の方がメシ写真は美味しそうに撮れると考えているため、iPhone 14のカメラは飯テロ力は高めだと考えています。

iPhone 14の広角カメラで2倍デジタルズーム
iPhone 12 Proの望遠カメラで光学2倍ズーム

最後に「iPhone 14のデジタル2倍ズーム」と「iPhone 12 Proの光学2倍ズーム(望遠カメラ)」での写りの違いをチェックします。

精細さではやはりiPhone 12 Proの光学2倍ズームに分がありますが、iPhone 14のデジタル2倍ズームもディテールが潰れてしまっているわけではないため言われない限りわからないでしょう。

2倍ズームの35mm判換算で約50mmの画角は例えばテーブル上の食事を撮影する際に自分の手の影を入りこませないで撮影できるため多用したり、バス停の時刻表だとか掲示物を撮影する際に便利なんですよね。
それだけ多用するならiPhone 14でも望遠カメラが載ったiPhone 14 Proを選べば良かったのでは?と思うのですが、最近のスマートフォンでは「2倍のデジタルズームはAI補完で超キレイ」なんて機種も多く、iPhone 14でもそこに期待して購入したという経緯があります。

作例の通りデジタル2倍ズームの写りに文句はないのですが、カメラで「2倍」への切替が指先ひとつで行いづらいのは盲点でした。
ピンチ操作で拡大するようにズームを行うか、x0.5(超広角)⇔x1(広角)の切替ボタンを長押しし、ズームダイヤルを表示して切り替えることもできますが、どちらも2倍ズームまでの操作が煩雑になるため、画質には満足したものの、ズームを多用するのであれば望遠カメラが載ったProを選んだ方が撮影のストレスは少ないです。

盲点だった「Apple ProRAW撮影非対応」

iPhone 14に買い替えた後に「しまった!」となったのが、Apple ProRAWでの撮影に非対応なこと。

iPhone 12 Proを購入した際も、後日アップデートでApple ProRAWに対応することが表明されており、それを目的にProを買うことを決めたにも関わらずiPhone 14の購入時にはすっかりそれを忘れていました。

レンズ交換式カメラで「自分は何を撮りたいのか」が迷子になった時期があり、一度持っている機材を手放して改めて欲しい機材をよーく考えて買おうと試みてた時期があるんですよね。
その期間中、撮影後の補正など行いやすそうなカメラとしてiPhone 12 ProのApple ProRAW撮影をかなり頼っていて、実際に「結構満足できる撮れ高」があったので気に入っていただけに本当に「しまった!」と思いました。

余談ですが、以下の記事のThinkPad X13 Gen 2の写真はiPhone 12 ProのApple ProRAWで撮影後、Adobe Lightroom ClassicでRAW現像を行い補正を行っています。

だめ出しをするならそれは「価格」

iPhone 14はここまでに書いてきた通り、褒める部分もなければ貶す部分もない、とにかく「普通」のスマートフォンです。
新しい部分がないことは新しいもの好きからすれば「つまらない」と評することもできますが、スマートフォンがこれだけ熟れてきた中で「普通」であることが強みになる製品もなかなかないと思うんですよ。

ただそれでもだめ出しを行わないといけないとすれば、それは「価格」です。

iPhone 14が高いというより為替の影響が……とか、外的要因も大きいのですが、そうだとしてもスタンダードなモデルが10万円を超える値付けになっているのは一般的にはなかなか手を出しづらいでしょう。

さらにiPhone 14はカメラこそiPhone 13よりも僅かに性能向上していますが、スマートフォンの性能を決めるSoCはiPhone 13から据え置き。それ以外の仕様・機能でもiPhone 13比で据え置きの部分がほとんどです。
それでいてiPhone 13も併売され価格も安く、大手通信事業者の各種キャンペーンまで含めるとiPhone 13が圧倒的に手を出しやすい価格で販売されているとなると、iPhone 14をわざわざ選ぶ人は極僅かでしょう。

また後継のiPhone 15はiPhone 14や13よりもSoCもカメラも性能が大きく向上し、iPhone 14 Proで採用されたDynamic Islandを搭載するなど性能も外観も一新されていて価格は約12.5万円です。
iPhone 15の登場で値下がりしたとはいえiPhone 14は約11.3万円だと考えると、価格差は僅か1万円程度。
上に書いた通り併売されているiPhone 13はApple公式でも約9.6万円で2万円近く安く、様々なキャンペーンを適用すればさらに安く買えるとなると、iPhone 14は上にも下にも魅力的なモデルがある状況で、これを買う理由がどこにも見当たらないんですよね。

筆者個人の趣向の話だけをすればiPhone 14のブルーはすごく好みの色でしたし、2022年の発売当時まで遡ればiPhone 13とiPhone 14の価格差も僅かで、それならiPhone 14を選ぶという選択は悪くなかったと思っていますが、今から選ぶスマートフォンとしては微妙と言うしかないでしょう。

買って正解だったけど感動はなかったiPhone 14

新しい製品を買うときはワクワクしながら買いますし、ワクワクしたらその熱量でレビューを書いたり周りに自慢をするのがガジェット好きのよくある話だと思います。
そうならなかったのはiPhone 14が「普通」だったから、これに他ならないわけです。

レビューももう少しツッコんだ内容を最初は書こうと考えていましたが、いざ書き出してみると「秀でて何かが何もない」と気付いてしまい、正直スマートフォンのレビューとしてはかなり内容が薄いです。

ただ、この内容の薄さはiPhone 14がそれだけ従来のiPhoneや他スマートフォンでやってきたことを「当たり前に行える1台」であり、飛び道具のような機能は必要としない「普通に使える1台」を求めている人には丁度いいスマートフォンであることの証明です。

筆者自身、最新は追いかけているものの自分自身のスマートフォンの使い方は「普通」になってきていると感じていますし、その普通を買い替えた後も損なうことなく使えたことへの満足感は高く、iPhone 12 ProからiPhone 14への買換は正解だったと考えています。

もちろん、これから買うには価格の問題もあって万人にオススメはできないのですが、今後何かキャンペーンの実施など安く買える機会さえあればiPhone 12やそれ以前のスマートフォンからの買い替え先としては十分に選ぶ価値のある1台です。

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