期待しすぎた「Xperia 1」で期待外れだったところ – ワーストバイガジェット 2019

ケータイ

いくつかのアドベントカレンダーに参加し、今月は色々と今年を振り返ったり数年前のことを振り返ったりする記事をお送りしてきたアドベンマラソンも遂にこの記事で最後です。

ラストに書いていくのは「2019年のワーストバイ」。
先に断っておくと決して特定のメーカーや製品を悪く言いたいのではなく、今年買ったものに順位を付けたら一番ビリだったとか、何かが欠けていたがためにとても残念に感じてしまったみたいなお話です。

そんな僕の2019年のワーストバイを飾ったのは「Xperia 1」です。
ベストバイに挙げている人も多いんですが、僕の中ではワーストです。

期待しすぎた

正直これがほとんどなんですけど、Xperia 1に対して期待しすぎてました。

Xperia 1のスペックは2019年のフラグシップモデルらしく、Snapdragon 855に6GB RAM、64GB ROMに広角・超広角・望遠のトリプルカメラ。別にこの内容だったら他のメーカーを選んでもいいわけですが、XperiaはX1から買い続け、Galaxy S8で浮気するまでほぼ毎シーズン、メインのスマホに選んできたメーカー・ブランドなので、無意識に今回のXperiaもきっといいものなんだろうと強く期待していたようです。

Xperia Zから続くオムニバランスデザイン、その流れを汲んでXperia XZで改められたループサーフェスデザインから大幅にデザインを刷新したXperia XZ2・XZ3の「アンビエントフローデザイン」を1年でやめ、Xperia 1ではスクエア・板状の「見慣れたXperia」のデザインに回帰しました。
そこに待望のトリプルカメラや、他メーカーにはない21:9 シネマワイドの有機ELディスプレイを搭載するなど、渾身のフラグシップと言うだけの新しい試みが詰まった、まさにXperiaファンならば大きな期待を抱かないわけがない1台だったのです。

センスのないサイドセンス

Xperia 1にも色々な売りがありますが、見た目のインパクトも大きい21:9 シネマワイドディスプレイはXperia 1の一番の特徴でしょう。
マルチウインドウを活かし、画面の上部にYouTubeなど動画を再生しながらでもブラウジングやSNSを楽しめる使い方は新しい使い方として発売前から注目を集めました。

同様の使い方は18:9や18.5:9のディスプレイを搭載したGalaxy S8など、いわゆる「縦長」のディスプレイを搭載した機種が多く登場した2017年頃から色々なメーカーが訴求していましたが、実際に使ってみると従来の16:9よりもメインで操作したいアプリの表示域が狭くなってしまい、イマイチ使い勝手がよくなかったんですよね。

なので、Xperia 1の21:9というアスペクト比には期待して使い始めたのですが、これも使い勝手が悪いのです。

使い勝手が悪い理由を考えましたが、これはマルチウインドウを気軽に呼び出せる「サイドセンス」にセンスがないから。
画面のエッジを二回タップすると表示されるアプリランチャーのサイドセンス。
これがケースを付けた場合に反応が悪く、パッとマルチウインドウに切り替えて使いたくても呼び出せません。呼び出せないから結局使わなくなり、使わないとなるとただ縦に長いだけのディスプレイは指が届きづらく使い勝手の悪いものでしかなくなります。

もちろん、動画視聴など21:9 シネマワイドディスプレイに表示することで上下に黒帯が出ないとか、カラーチューニングを頑張ってるだけに映画の視聴は本当に美しいとかディスプレイそのものの品質は最高なんですが、動画視聴のためだけにスマートフォンをもう一台持ち歩くかと聞かれたら答えはNOです。

プロもびっくりの動画撮影は、プロが使うことを考慮してない

ハードウェアデザインについても、ちょっと気になる部分があります。
それが本体右側のボタンの配置。
Xperiaシリーズとしてはいつも通りのボタンの配置なんですが、Xperia 1ではここは改めて欲しかった。

改めて欲しかった理由はXperia 1の売り機能である「Cinema Pro」という動画撮影機能。

Cinema Proでは4K HDRや映画に多い24fpsでの動画撮影が行えます。
シャッタースピードやISO感度、ホワイトバランスの調整やプリセットの「Look」として色合い・明るさを設定して、さながら映画のような映像作品を撮影できることを売りにしています。

せっかくの動画撮影機能を活かして、例えばこのブログにもちょっとカッコイイ動画をコンテンツとして追加してやろう!とか、我が子と出かけたときにいい感じの動画を撮っておこう、そんな事を買う前までは考えていました。

が、このボタン配置のせいで台無しです。
台無しな理由というのが、動画撮影時の手ぶれを抑える周辺機器として人気の「ジンバル」との相性が最悪なんです。

この写真で組み合わせているのはManfrottoのミニ三脚「PIXI」とスマートフォンホルダーですが、多くのジンバルのスマホホルダー部分はもう少し幅のある製品が多く、がっしりとジンバルに固定してしまうとボタンを押してしまって画面が消えたり、意図せずカメラアプリが落ちてしまうんですね。
ボタンとボタンの間隔が開いている場所を上手に狙って取り付けても、今度はジンバル側でバランスがとれなくなってしまうことも。

プロユースにも応えられるくらいの事を言っていたXperia 1のCinema Proですが、プロユースならばジンバルとの組み合わせは必ず行われると言ってもいいでしょう。なのに、ボタン配置が最悪なせいで多くのジンバルとの組み合わせに難ありでは、誰のためのCinema 「Pro」なのかサッパリわかりません。

センスのないサイドセンスのせいでマルチウインドウも活かしきれないなら、せめて他の機種にはない動画撮影モードを活かして活躍させようと考えましたがそれも叶わず。
肝心のスマートフォンとしての完成度も、GalaxyやHUAWEIらに比べるとUXに不満を感じる部分が多く、ハードウェアとして優れた部分はあってもスマートフォンとしてはイマイチ。

結果的にXperia 1は、iPhone 11を買うまでの3ヶ月間、超広角で写真を撮りたいときに活躍するだけのスマホになってしまいました。
動画撮影もDJI OSMO POCKETに任せた方が便利だし、Xperia 1が期待外れだったのでスマートフォン用のジンバルもモバイルドッコムのちえほんにあげちゃいましたし。


書き出したら少し辛辣な話ばかりになってしまいましたが「Xperia 1が売りにした部分に期待しすぎた」に尽きます。

Xperia 1自体は、見た目がすごい好き。
思った通りの使い方はできませんでしたが、所有欲を満たしてくれる一台だったのは間違いなく、活躍の場が少ないとはいえ手元に残して使っている一台でもあります。

苦境に立たされているソニーモバイルのスマートフォン事業。
Xperia 1が活路を切り開けたかは正直なところわかりません。華のある機能より、スマートフォンとして「使い勝手を良くする工夫」がもっとあれば、それこそ今の筆者のようにGalaxyの「おもてなし」に囚われて他のメーカーのスマートフォンを使っても不満を感じる状況のように、Xperiaを選んだユーザーを囲い込むこともできるのでは?と思ったりもします。

現在はメインでXperiaを使っていないので説得力に欠ける気もしつつ、思い出のノートPCとして紹介したVAIO type Y以降、デジタルガジェットは積極的にソニー製品を選んでいる筆者が、またXperiaをメインに据えたくなるような一台が来年は登場してくれることを切に願います。

この記事は「今年のワーストバイガジェット Advent Calendar 2019」の25日目の記事です。
Twitterで「ベストバイは色々あるけど、敢えてワーストだった理由が知りたい」と呟いたところ、Creator Clipのとくめいさんが企画してくれました。
ちょっとセンシティブなテーマなので25日全部は参加者が埋まりませんでしたが「誰かにとってのワーストバイがベストバイ・ベストバイがワーストバイ」な話が色々集まっていますので、お時間のあるときに他の人の記事も是非読んでみてください。