寝台特急に乗ってみた – サンライズ瀬戸で高松から東京へ帰る

旅行

前々から気になっていたJRの寝台特急「サンライズ」に乗車・利用しました。

サンライズは四国方面と東京を結ぶ「サンライズ瀬戸」、山陰方面と東京を結ぶ「サンライズ出雲」の2系統があります。
今回は香川県・高松から東京へ向かう「サンライズ瀬戸」を利用しましたが、どちらの系統を利用しても車両は同じですし予約方法なども変わりません。そのため本稿では一括して「サンライズ」としてご紹介していきます。

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寝台列車に乗ってみたい!!

筆者はそこまで電車には詳しくありません。なのでつい最近まで「定期運行されている寝台列車がほとんどなくなってしまった」ということを知りませんでした。

宇都宮線(東北本線)沿線で生まれ育ったため「北斗星」や「カシオペア」は見慣れた寝台特急で、ふんわりと「いつか乗ってみたい」と思っていたんですがいつの間にか定期運行がなくなっていたんですよね。(現在は企画ツアーでの臨時運行)
寝台特急ではありませんが、青春18きっぷあたりで有名な夜行列車の「ムーンライトながら」も現在は運行されていないとのこと。

寝台特急に限らずネットを眺めていると「○○線が次の時刻表の改訂で廃止される」みたいな話は見かけますし、乗れるうちに乗っておかないとなくなってしまうんだろうな~と思い、今回は高松からの帰りに気になっていたサンライズ瀬戸を利用し東京まで帰ることにしました。

サンライズの切符はネットで買える。が、切符の受取場所に注意が必要。

サンライズの切符ですが、昔気になって一度調べたか、誰かから聞いたかしたときに「窓口に行かないと買えない」とか「JR東海やJR西日本の券売機でないと買えない」等、購入にハードルを感じる内容だなと感じた記憶があります。

が、現在はネットで購入可能です。

JR西日本が運営する「JRおでかけネット」のサンライズの特集ページから切符の予約・購入を行うことができます。
予約・購入方法ついては乗車日や発着駅を間違えなければそう難しいことはないと思いますのでここでは割愛します。

“”関東民ならでは””の注意点を挙げるとすれば、予約した切符の受取場所です。
サンライズの切符はJR西日本やJR東海の窓口、券売機でないと受け取ることができません。事前に切符を受け取っておきたい場合、関東圏だと東京駅や品川駅のJR東海の券売機や窓口まで出向く必要があります

[2023.10.30 20:52追記]

JRおでかけネット(e5489)で予約したJR東海・JR西日本の切符について、現在は「東京都区内のみどりの窓口・指定券販売機(等)」でも発券・受取が可能になっているそうです。(Twitter: masaさん情報

JR東日本の北陸新幹線の各駅、東京都区内の主な駅の「指定席券売機」「みどりの窓口」、ならびに成田空港駅・空港第2ビル駅の「指定席券売機」

https://www.jr-odekake.net/goyoyaku/e5489/receive/

高松駅からサンライズ瀬戸に乗る。

前置きはそこそこに、実際のサンライズの乗車記を。
冒頭でもご紹介した通り、今回は香川県・高松駅から東京行きのサンライズ瀬戸を利用しました。

高松駅の発車時刻は21時26分。実際に列車が駅に到着するのは20時55分前後が多いようです。

詳しくは後述しますが、筆者は20時30分頃に高松駅へ行き、サンライズの到着までは駅の改札外にあるセブンイレブンとスターバックスコーヒーで軽食と飲み物、そしてお土産の購入を行いました。
サンライズ車内には飲料の自販機はありますが食堂車や車内販売はありません。そのため夜食(または朝食)は事前に購入しておくといいでしょう
筆者はおにぎり2つ、ポケットサイズのチョコレート1つ、そして500mlの飲み物を2本を用意しましたが量としては丁度よかったです。

シャワーカード争奪戦 – 君は湯を浴びることができるか

サンライズにはシャワールームが用意されています。
利用に際してはサンライズ車内で販売されているシャワーカード(330円)の購入が必要となっていますが、これが乗客全員分は用意されていません。
どのくらいの数の用意があるのかはわかりませんが、事前にネットで調べると「20名分しか用意がないらしい」など、席・部屋数からするとシャワーカードの枚数はかなり少ないようです。

そのためサンライズでシャワーを利用するためには「早く駅についてシャワーカードの自販機近い乗車口の列に並び、真っ先に購入する」必要があります。
筆者が早めに高松駅に出向いたのもこれが理由です。高松駅からサンライズに乗車する場合はホーム上の「サンライズ瀬戸 11号車」の場所に並び、乗車したらすぐに右の10号車に向かうとシャワーカードの自販機に辿り着くことができます

シャワーカードの自販機で利用できるのは硬貨、または1,000円札のみ。硬貨も2トーンカラーになった新500円玉は利用できません。
もし手持ちがなければおみやげや夜食の購入時にお金を崩しておくといいでしょう。
(筆者は偶然小銭がぴったりあったので助かりました。なければ万券しかなかったので詰んでました)

今回は「B寝台・シングル」の個室を利用

サンライズには部屋のグレードがいくつかあります。
フェリーの雑魚寝スペースのような安価な「ノビノビ座席」も寝台列車らしさがありますが、筆者の荷物の中には高価なカメラやノートPCなどもあるので今回は施錠もできる個室タイプ「B寝台 シングル」を利用しました。

部屋の広さはネットカフェの「フラットシート」を選んだときと同じくらいといえばわかりやすいかもしれません。
2泊程度の荷物が入るバックパックやスーツケースなら、右手前の荷物置きスペース(スタバの紙袋が見切れている場所)にピッタリハマります。今回利用したバックパックはAerのTravel Pack 3で容量は35L。これがハマるサイズと言えば部屋の広さ同様にわかりやすいかも。

個室にはテーブルも用意されています。
コンビニなどで買える幕の内弁当くらいならはみ出ることなく置けるだけの奥行があります。写真を撮り忘れましたが、ThinkPad X13 Gen 2も余裕だったので寝食忘れて作業をする必要がある場合でも問題なさそうです。

またスタバのカップを注目してもらうとわかりますが、カップホルダーが備え付けられています。
ペットボトルのように口を閉じることができるもの以外はこのホルダーを利用すれば、電車の揺れでも倒れる心配はありません。

電源コンセントはテーブル側に1つ。出力は2Aまでと制限があるため、機器によっては給電できない可能性があります。スマートフォン1台の充電なら問題ありませんが、写真のように複数台の機器を同時に充電する場合やノートPCなどの利用には注意が必要です。
余談ですが、スマートフォンはフルに充電しても翌朝になると結構バッテリーが減っていました。サンライズは長い距離を連続して移動する寝台特急なので、携帯電話も基地局の切替が頻繁に行われる影響でどうしてもバッテリーが普段以上に減るんですよね。目的地に着いてからも色々とスマートフォンを利用する予定がある人は、充電器に繋いだまま朝を迎えた方がいいでしょう。(バッテリーへの負担については考えないものとする)

その他、個室の設備としてはテーブル・ベッドの下に簡易のゴミ箱としてビニール袋が備え付けられていたり、今回は喫煙車を利用したので昔ながらの灰皿がテーブル下に設けられています。
また、写真を撮り忘れましたが衣類用のハンガーも1つ備え付けられているので上着はそちらにかければOKですし、筆者はそこに追加でショルダーバッグをかけておきました。

その他の車内設備について

サンライズには指定された座席以外にも乗客なら誰でも利用できる「ラウンジスペース」が設けられています。

ラウンジペースは4席×2で、大きめの窓から車掌を眺められる他、ここで食事や歓談に利用することができます。

筆者はほとんど自室に引きこもっていたので利用することはありませんでしたが、何度かここを通った際には高松駅で電車の写真を撮っていた人たちが各々のカメラで撮ったものを見せ合っていたり、夫婦でお弁当を広げ食事をしている方などもいました。

争奪戦を勝ち抜いて利用することができたシャワーの使用時間は6分間。シャワールーム自体は「30分以内のご利用をお願いします」とのこと。
スタートボタンを押せばすぐにお湯が出るので暖まるのを待ったりする必要はありません。が、水圧はそんなに高くないので髪の長い人や整髪料でしっかりセットしているときはちょっと物足りないと感じるかも。
リンスインシャンプーとボディソープが用意されています。タオルだけは自分で用意しないといけません。(高松駅のセブンイレブンでは「サンライズ アメニティセット」として、タオルと歯ブラシがセットで販売されていました)

シャワールームの脱衣スペースにはドライヤーも用意されています。
ドライヤーはグリップのボタンを押している間は風が出る仕組みなので、いつもよりもグッとドライヤーを握って利用する必要があります。あと、風はそんなに強くない。

あと「揺れる電車内でシャワーなんて満足に浴びられるのか」ですが、シャワールームも脱衣所にも手すりがあちこちに用意されているので意外となんとかなります。

で、肝心の寝心地はどうなのか

寝台特急なので肝心の寝心地がどうなのか。
片道1~2時間、長くても3時間くらいの新幹線や飛行機(国内線)とはワケが違います。サンライズ瀬戸は寝台特急、高松駅を21時26分に発車し、東京駅到着は翌朝7時8分。乗車時間は10時間弱であり、一夜を過ごすのでしっかり眠れるかどうかはかなり重要です。

「B寝台・シングル」は1F、2F、そして「平屋」の3タイプが存在します。
今回利用したのは「平屋」で3タイプの中ではもっとも天井が高く、寝転がってもそこまで圧迫感を感じることはありません。1F、2Fだとどうなるかはわかりませんが、どれも成人男性が立ち上がっても天井に頭がついてしまうようなことはないようなので、どれを選んでも極端に圧迫感を感じることはないはず。

ベッドは大人一人分のスペースと広くはありませんが、寝返りもなんとか打てるので寝転がりながら楽な体勢を見つけるのにもそこまで苦労はしませんでした。

マットレスや枕は硬めで、特に枕は高さも合わなかったので上着として持っていったジャージを使って調整しました。このあたりは好みもあるので一概に善し悪しを決められないのですが、真夏でもない限りは何かしら厚みのある服があるでしょうから、それで調整すればいいでしょう。

そして気になる電車(列車?)ゆえの「揺れ」や「走行音」について。
「平屋は一番揺れや走行音を感じやすい」といったレビューも事前に読んでいましたが、比較対象となる経験もないので「寝台特急とはこういうものだ」と思えば別に苦ではなく、揺れや走行音を理由に目が覚めることもありませんでした。

気になったのは季節的なものもありますが室温です。深夜~明け方にかけ2度ほど寒さで目が覚めることがありました。
個室の窓も大きいため、外気が冷たければそれなりに室内も冷えます。空調は小窓を閉じる・開けるの簡易調整しかできないので寒いから暖房を入れよう・暑いから冷房を入れようといった部屋毎の細かな調整はできません。
浴衣タイプの室内着も用意されていますが、必要に応じ自分で着るものを選んで調整するといいでしょう。

また部屋のカーテン(遮光スクリーン)を少しだけ開けて寝転がりながらも外が見えるようにしていたのですが、揺れで徐々にあがっていってしまい、寝落ちて次に目が覚めると窓の1/3~半分くらいまで開いていることがありました。
多分これも室内が冷えた理由だと思いますが、寝ているときは車窓を諦めてしっかり締め切った方が良さそうです。

一回乗って満足?いいえ、また乗りたい

寝台列車が年々消えていく理由は色々あると思うのですが、一番はコストや需要の問題でしょう。
今回、行きは東京(羽田空港)から高松(高松空港)まで飛行機で移動していますが、自宅から羽田空港・高松空港から高松市街(瓦町)の移動費をコミにしてもサンライズの乗車券・特急(寝台)料金よりも安価に済んでいますし、時間も諸々コミで5時間弱、フライト時間だけなら1時間ないくらいだったので寝台列車のコスパ(タイパ)は最悪です。

筆者が小学生の頃……と考えるとだいたい20年ちょっと前になりますが、その頃はまだ色々な寝台列車や夜行列車が走っていた気がします。
そこから今日に至るまでで考えても「東北新幹線の延伸」「北海道新幹線の開通」「長野新幹線の開通」「北陸新幹線の開通・延伸」だとか「時速300km/hで走る新幹線」などなど、新幹線の新規開通・延伸や高速化(速達性って言うんでしたっけ)も行われており、需要がそちらに向いてしまうのも仕方のないことです。

陸 vs 空で考えてもLCCなど格安航空会社の台頭だけでなく、ANA/JALも頻繁に行われるセールなら1万円を切る価格で飛行機が利用できます。そうなると更に寝台列車や夜行列車を選ぶ理由はなくなります。

それでも寝台列車の乗車体験には満足しています。
「電車に泊まる」体験は他の国内移動にはない体験です。夜行バスのように夜通しの移動手段は他にもありますが、寝泊まりをするための個室やシャワールームの利用できるのは寝台列車ならではでしょう。
そして初めての利用だったからこそ「次はこうしたらもっと快適かも」と考えている節もあり、現状定期運行の夜行列車の選択肢はサンライズしかないわけですが、それでも「また乗りたい」と思っています。

東京駅で下車直後に撮影したサンライズ。東京まで快適に運んで頂きありがとうございました。

「一度は経験しておきたい」と思って乗った寝台列車の乗車体験ですが、すっかりハマってしまいそうです。