イギリスのスタートアップ企業「Nothing Technology(以下、Nothing)」から今夏発売されたスマートフォン「Nothing Phone (1)」を購入、しばらく使ったのでレビューします。
Nothing Phone (1)を買った理由
シンプルに「見た目がいい」と思ったから、これに尽きます。
Android枠として使ってきた「Google Pixel 5」に飽きてきて、そろそろ2年が経過し買い替え時期を迎えるにあたり、後継モデルは個人的にガッカリだった「Google Pixel 6」のデザインを踏襲するようなので、他のスマートフォンはどうだろう?と考え始めたタイミングで、好みドンピシャの1台に巡り会えたからです。
詳しい仕様については後述しますが、Google Pixel 5からの性能低下は望ましくないため、この点でもNothing Phone (1)はクリアしていたことも、最終的な購入の決め手となりました。
Nothing Phone (1)の仕様 – ミッドハイレンジで充実した性能
Nothing Phone (1)の基本仕様ですが、ざっくり言うと「ミッドハイ」ですね。
メーカーによっては最上位モデルがこの性能ということもあり、普段使いでは重量級のゲームでも遊ばない限りは不満のでない仕様・性能です。
価格は発売当時で63,800円から。性能に対しての値付けはお買い得感は高い方かなと。
なお、発売時よりも為替の影響などもあり10,000円の値上げが実施されましたが、公式サイトを始め定期的にセールで「今までの値段」で販売されていることが多々あるため、2022年末時点でもコスパを重視したい人には有力な選択肢となる1台だと思います。
Nothing Phone (1)の仕様 | |
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OS | Nothing OS (Android 12ベースの独自OS) |
SoC | Qualcomm Snapdragon 778G+ |
メモリ | 8GB / 12GB |
ストレージ | 128GB / 256GB (UFS 3.1) |
ディスプレイ | 6.55インチ 有機EL 2,400×1,080px (FHD+) / 120Hz駆動 / HDR対応 |
アウトカメラ | 広角 約5,000万画素 換算24mm F1.88 超広角(114°) 約5,000万画素 F2.2 |
インカメラ | 約1,600万画素 F2.45 |
SIMカード | nanoSIM×2 (DSDV対応) |
モバイルネットワーク | 5G Band n1/n3/n5/n7/n8/n20/n28/n38/n40/n41/n77/n78 4G Band 1/2/3/4/5/7/8/12/17/18/19/20/26/28/32/34/38/39/40/41/66 3G Band 1/2/4/5/6/8/19 2G 850/900/1,800/1,900MHz |
Wi-Fi | IEEE 802.11a/b/g/n/ac/ax (Wi-Fi 6まで対応) |
Bluetooth | Bluetooth 5.2 |
バッテリー容量 | 4,500mAh |
外部接続端子 | USB Type-C(PD 33W) |
ワイヤレス充電 | 対応(15W) |
防水・防塵 | IPX3/IP5X |
生体認証 | 画面内指紋認証 |
本体サイズ | 約159.2×75.8×8.3mm |
重量 | 約193.5g |
Nothing Phone (1)の外も中もチェック
購入理由に性能ときて、ここからは本編「レビュー」です。
外観
Nothig Phone (1)で筆者が最初に惹かれた部分であり、多くの人が興味を持つ部分が特徴的な外観でしょう。
スマートフォンはよく言えば成熟、悪く言えば没個性と最近はデザインの差別化が各メーカーで難しく、金属素材や金属表現を多用したきらびやかな仕上げの背面パネルがはめこまれた機種が多い中、Nothing Phone (1)は中身の見える透け透けパネルです。
見える中身は実際に動作する部品そのものをカタチ取ったものもありますが、ほとんどはデザイン重視のハリボテ。それでも没個性のスマートフォンの中では、メカニカルな見た目は個性的ですし、ガジェット好きならば往年のスケルトンボディの機種や製品を思い出し「お!」となるはずです。
ちなみに「中身を見せる」だと、かつてKDDI(au)から発売されていた「X-RAY(TSX06)」も、スケルトンボディから見える中身を見せるため、通常とは違う部品配置にするといった工夫が行われていました。
こちらは本当に動いている部品がそのまま見える部分が多かったので今見てもわくわくするんですが、スマートフォンは部品の集積率もあがり中身を見せてもバッテリーがほとんどになってしまいます。
ハリボテであっても敢えて見せる、いや「魅せる」ための工夫は好意的に受け入れたいところです。
また背面の魅せる工夫が白く発光する「Glyph Interface」と呼ばれるLEDイルミネーション。
Nothingいわく「全部で947個」ものチップLEDがGlyph Interfaceには敷き詰められているため、光のムラなく美しく発光でき、さらに部位ごとに順次点灯・点滅を行うアニメーション発光を可能にしています。
意識高い系メーカーらしく「再生アルミニウム素材」を使用したサイドフレームは、角は落としつつもフレームそのものはフラットなので平坦な場所に置けば自立できるほどに工作精度も高く、質感の向上に一役買っています。
工作精度の高いサイドフレームの中でも特にデザインへのこだわりを強く感じるのが本体底面の各種ポート類。
スピーカー・USB Type-C・SIMカードスロットの3つがきれいにフレームの上下中央に揃うように配置されています。
これ、地味にすごいことなんですよね。部品ごとに厚みや奥行に違いがあって、それを横一線に並べようとすると基盤側に工夫が必要だったりします。
特徴的な背面と比べると正面・ディスプレイ側はかなり普通。
インカメラは画面左上にパンチホール型で備わっているイマドキのAndroidスマートフォンらしい見た目です。
それでもデザインにこだわったメーカーらしさを挙げるとすれば、ディスプレイ4隅のアールはサイドフレームに合わせてありますし、ディスプレイベゼルの幅は4辺ともに揃えてあるなど、細部までしっかりとこだわりぬいています。
先に挙げた底部の各種ポート類が横一線にキレイに並んでいることや、フレームとディスプレイのアールを揃えてある部分など、デザインの高さ……というよりもビルドクオリティはかなり高め。
……と、ここまで全体的に褒めてきましたが、基本的なデザインというか形状は「iPhoneそのもの」です。
どんなメーカーもそうですが結局はコモディティ化著しいスマートフォンにおいてデザインはだいたい似てしまうので仕方がないんですが、それにしても「まんま」です。
ソフトウェア
続いてチェックしていくのが「ソフトウェア」。Nothingいわく「Androidをベースにした独自OSのNothing OS」を見ていきます。
独自のOSとは言っていますがほとんど素のAndroidです。
ホーム画面に何かしら工夫があるのかと思いきやそういったものもほとんどありません。何が違うんだ?と聞かれてもサイゼの間違い探し並に見つけづらい程度の変更しか行われていません。
いい意味で「メーカー独自の機能が普段使っているアプリの動作を邪魔する」ようなことがないとも評することはできます。
メーカーカスタマイズを感じられる部分があるとすれば、よく使う場所だとトグルスイッチ部分くらい。Android 12以降の使い勝手が最悪のモバイルデータ通信・Wi-Fiの切り替えボタンとBluetoothが大きく表示されるよう変更されていますが、ただ大きく表示されているだけで機能的に何か手が入っているわけではありません。
設定画面にも機種イメージが表示される、他のメーカーでも最近見かけることの増えてきた工夫はありますがそれだけです。
ああ、そうだ。そういえばNothing OSとしてのカスタマイズがもう一点ありました。
設定画面の見出しの一部がドットマトリクス風のフォントに変更されています。が、これも一部だけですべてがこのフォントで表示されるわけではないですし、言語設定で日本語を設定していると特徴的なフォントと普通のゴシック体が入り交じる最悪の見た目になります。
ちなみに本体背面のLEDイルミネーション「Glyph Interface」も本体設定から変更することが可能です。
設定項目としては「オン・オフ」と、Nothing Phone (1)を裏返して置いたときに着信音とバイブレーションの代わりにイルミネーションだけで通知を行う「Glyphに切り替え」を使うかどうか。
また着信時にGlyph Interfaceのどこをどのように光らせるかはユーザーが任意に設定することはできません。
プリセットされたオリジナルの着信音に、それぞれにメーカーとして合うと思った発光パターンがセットにされているので自由度はゼロ。個人的に電話のように目立ってほしい着信はビカビカと光らせたいですし、メールやLINEなどメッセージの通知はゆっくりフェードさせて短時間光るように設定とかしたかったんですが、そんなユーザーの意向は全部無視される素敵仕様です。
そんなNothing OSですが、OSのメジャーアップデートは3年間、セキュリティパッチは2ヶ月毎・最長4年間実施と長期のサポートが約束されています。
もちろん4年後にNothingが生き残っていればの話ですが、使い始めて4ヶ月の間にも軽微な不具合の修正や機能追加のアップデートがしっかり配信されているため、今のところは公約通りのアップデートが行われていて安心といえば安心です。
もしかすると独自性の薄いNothing OSも、こうしたアップデートで独自性を得ながら進化していくのかもしれません。
また全体的な操作感については可もなく不可もなく。参考までにGeekBench 5のスコアを貼っておきますが、Snapdragon 788G+としては平均的なスコアですし、ほぼ素のAndroidらしく余計なカスタマイズもないので動作は割と軽快です。
120Hz動作のディスプレイの効果の程はわかりませんが、画像の多いスクロールがしんどそうなWebサイトの閲覧でも指の動きにしっかり追従するくらいにはよく動きます。
Nothing Phone (1)の意外と撮れるカメラをチェック
新興メーカーのスマートフォンのカメラといえば残念な写りになるものの方が多い印象がありますが、Nothing Phone (1)のカメラは意外と撮れます。
適当に何枚か、メインの広角カメラと超広角カメラで撮影した作例を並べてみましたが、イマドキのスマートフォンらしい彩度高めの写真を撮ることができます。
もちろんカメラ機能に定評のある他のメーカーと比べると超広角で撮影した際に四角が流れすぎているとか、夜景撮影は頑張って明るく撮ろうとして白飛びが目立つ部分はありますが、スマートフォンのカメラとしては十分に合格点をあげられるかなと。
ちなみに広角カメラと超広角カメラでホワイトバランスの差が大きいというチューニング不足が発売当初から言われており、後日この差異を埋めるアップデートの配信もありましたが、それでも他社スマートフォンに比べると差を感じる場面は結構あります。
まぁ、同じ場所で複数のカメラで撮影するようなことって一般的にはそんなないと思うので実用上気になる場面はそんなにはないはずです。
(超広角側は暖色に振れすぎていて、午前中に撮っても日没前みたいな絵になりがちなんですよね)
総括 – 成績中の上くらいのヤツが流行りの服を着てるだけのスマホ
開発発表から発売まで、約半年ほどかけ情報を小出しにしながら遂に発売になったNothing Phone (1)ですが、Nothingというブランドの掲げるテーマからすれば特徴的な背面を除くとすべてが凡庸です。
少なくとも今時点では「誰に向けたスマートフォンだったのか」がイマイチハッキリしていないなと感じますが、Nothingの製品デザインに含まれる「ドットマトリクス」「スケルトン」は最近のレトロブーム(平成初期や90年代あたり)とマッチします。
もしそれらをクールだと言っている層がターゲットなのだとすれば、もっともっと彼らが喜びそうな機能やカラーバリエーションを増やすなどしたら人気が出るのかもしれません。
「市場にあるどんなスマートフォンよりも特徴的なものを出す」かのような宣言からするとこの程度か……とガッカリした反面、特徴的な部分以外のスマートフォンとしての完成度としては十分に高いため、見た目重視で購入しても失敗にならないのは、Nothing Phone (1)のスゴイところでしょう。
これを総括すると、成績が中の上くらい、普通の子が試しに流行モノの服を着てみた「だけ」という感じ。まだ着こなせてはないですね。着こなせたらきっとスゴくオシャレさんになるはずです。
正直何をもってNothing Phone (1)を人に薦めるかと聞かれたら考え込んでしまうのですが、ひどく購入を後悔するようなガッカリ感もなかったので、メーカーやブランドにこだわりはなく、求める機能も酷く重たいゲームで遊びたいなどもなく、スマートフォンとして一通りのことが快適にできる1台はどれかと聞かれたときに「見た目が好みならおすすめ」としては挙げることができそうです。
▼ 別媒体でもレビュー書いてます
完全に余談ですが、発売前にレビューしてそれでも自腹で買っているあたり、ものはちゃんといいんですよ。ちゃんといいだけに、もっともっと工夫が欲しかった!という欲が出てしまっているだけです。