今年のベストバイガジェットはもの凄く悩みましたが、遂に日本上陸を果たしたフォルダブルスマホ「Galaxy Fold SCV44」に決まりです。
Galaxy Foldは兼ねてより予告されていた「折りたたみスマホ」で、2019年2月にグローバルで発表。
発売を前にディスプレイ・折りたたみ機構の問題が発覚し発売が延期。対策版は2019年9月に発売になりました。
日本国内では10月にKDDIでの取扱が発表され、同月25日からau SHINJUKUやau Online Shop、家電量販店の旗艦店の一部で販売開始となりました。
販売価格は約25万円と多くのメーカーのフラグシップモデル2台分の価格にも注目を集めましたが「1日あたり330円」という大変賢い考え方を教わり、それならば買ってみるかと購入を決めたのが約2ヶ月前のこと。
むしろもう2ヶ月も経ったのかと驚くばかりですが、パッと見ではキワモノとも言えるGalaxy Foldを、2ヶ月経った今も愛用している理由や、2019年を振り返って色々なガジェットを手にしている中で「ベストバイ」に挙げるに至った理由を今回はご紹介していきます。
閉じれば小さく、開けば大きい
当たり前のことですが、フォルダブルスマホは「折りたためること」が売りであり、閉じれば小さく、広げれば大きくなります。
過去にはNTTドコモから「MEDIA W N-05E」や「M Z-01K」、タブレットとしてはソニーから「Sony Tablet P」、Android黎明期には京セラが海外向けに「Echo」など、色々なメーカーから折りたたみ機構×2画面のスマートフォンが発売されているため「折りたたみ」だけに注目すれば珍しいものではありません。
Galaxy Foldが今までと違うのは、開いた状態の画面は左右に分割された2画面ではなく、シームレスに繋がった1つの大画面になること。
継ぎ目のないメリットとして、動画視聴時は「開いた広さ、大きさ」の1枚のディスプレイで動画視聴などを行えます。
これが従来の2画面のスマホとの大きな違い。2画面だと、どうしても中央部の継ぎ目、左右のディスプレイのベゼルが気になってしまい、大画面でコンテンツ視聴が行えるわけではありませんでした。
また、継ぎ目のない1枚のディスプレイであるメリットは「マルチウインドウ」でも発揮されます。
2画面で左右にそれぞれアプリを立ち上げて利用するのは便利です。これは従来でも行えていましたが、継ぎ目がないことで「2つ以上のアプリを、好きなサイズで表示できる」ため、メインとして利用したいアプリに画面の割合を大きく割いて利用することも可能です。
定番ですが、電子書籍を読む際にも大きな画面1枚で見開き表示して読むのは便利。
「見開きで1ページ」として描かれる場合も2画面スマホで両画面にページを開いた場合よりも読みやすくなります。
また、大画面を活かすという意味では写真の編集やドキュメントの表示にも最適。
先月Engadget日本版に寄稿した記事でも書いていますが、Galaxy Foldにミラーレス一眼で撮影した写真を取り込み、そのままレタッチ作業を行うのはかなり便利。
内蔵ストレージも512GBと大きく、USB Type-Cケーブル一本でカメラとも接続・取り込みが行えます。
標準のGalaxyキーボードの場合、開いた状態かつ横表示にすると、キーボードがQWERTYキーボード・かつ左右にスプリットされた「両手持ち」の最強環境になるのも利便性を高めてくれるポイント。
ブログや原稿の手直しなど、スマホの縦長な画面で編集を行うのは快適とは言えません。
それを横表示にしても16:9や18:9の解像度は「横にすると縦に狭い」ので、入力画面は狭く長文を表示・入力していくのは至難の業です。
「折りたたみ」に注目を集めがちなGalaxy Foldですが、折りたたみの真価はフォルダブル、シームレスな一枚の大きなディスプレイでこそ、やっと発揮されたと言い切ってもいいでしょう。
シームレスな大きな画面、Galaxy Foldであれば7型相当のディスプレイはiPad miniよりは一回り小さくなりますが、多くのタブレットと変わらないサイズです。
ヒンジが360度回転する機構や、デタッチャブルなキーボードを組み合わせるノートPCを「2in1」と呼ぶように、Galaxy Foldはスマートフォンとタブレットの2in1です。
キワモノで終わらせないスペック
Galaxy Foldを気に入っている理由として、もう一つ挙げるとすればそれは「スペック」です。
これまでに発売された折りたたみ・2画面のスマホは、発売時の他のスマホと比べ周回遅れのCPUを採用するなど、性能面で不満を感じる機種がほとんどでした。
例えばMEDIAS W N-05E。2013年春発売でCPUはデュアルコアのQualcomm Snapdragon S4、メインメモリは1GB。
この当時のハイエンドスマホはクアッドコアのSnapdragon S4 Proにメインメモリが2GBの機種が出始めていました。
さらにM Z-01Kについても2018年春の発売ですが、2016年のハイエンド相当のスペックです。
「折りたたみ」や「2画面」といった他にはない特殊な機構、ソフトウェア制御には開発コストがかかります。
実際に販売するにあたり「その時点での実用最低限の性能」とすることで価格を抑えているといった話も聞いたことがありますが、多くは「発売してから買って2年以上」は利用するものでしょう。
周回遅れとなればOSバージョンアップやアプリのバージョンアップで動作に不満を早くに感じる可能性があるのは、少なくとも日本市場での販売方法で考えれば、決して満足のいくものではありませんでした。
これも「折りたたみ」や「2画面」の特殊さに、妥協した性能を組み合わせることでキワモノ感を高めた理由かもしれません。
そうした過去の折りたたみスマホらのスペックを振り返りつつ、Galaxy Foldの主要スペックを、同じ2019年に発売された他社のフラグシップスマートフォンと比較した表が以下です。
Galaxy Fold | Xperia 1 | AQUOS R3 | |
---|---|---|---|
国内発売日 | 2019年10月25日 | 2019年6月14日 | 2019年5月25日 |
OS | Android 9.0 Pie | ||
CPU | Qualcomm Snapdragon 855 (オクタコア) | ||
メインメモリ(RAM) | 12GB | 6GB | 6GB |
内蔵ストレージ(ROM) | 512GB | 64GB(SIMフリーモデルでは128GB) | 128GB |
アウトカメラ | トリプルカメラ 広角: 約1,600万画素 超広角: 約1,200万画素 望遠: 約1,200万画素 |
トリプルカメラ 広角: 約1,220万画素 超広角: 約1,220万画素 望遠: 約1,220万画素 |
デュアルカメラ 静止画用: 約1,220万画素 動画用: 約2,010万画素 |
本来であればGalaxy Foldも今夏にはリリースされていただろう機種であることを考えれば、同時期の他社ハイエンドモデルと同じCPU・チップセットを搭載している点など、性能での妥協のないことがわかります。
そのまま販売価格に跳ね返った(約25万)と考えることもできますが、価格に関係なく「今までにないもの」として出てきた機種が、性能が不足することで息の短い製品にならないで済むことは素直に賞賛していい部分でしょう。
Galaxy Foldですが、その他にも”モニターと繋いで、PCライクに使える「DeX」”といった目玉機能が用意されています。
この機能自体はGalaxy S8の頃から用意されていました。ただ、正直に言えば日本語入力環境が満足に動かないケースなどもあり、徐々に改善されつつはありますがまだ成熟段階に達したとはいえません。
先にも書いたように、Galaxy Foldはスマートフォンとタブレットの2in1です。
もしDeXがより成熟してくれば、それこそPCも兼ねてしまう3in1になる可能性もあります。
Windows PCでもSnapdragonらARMアーキテクチャで動作し、モバイルネットワークに常時接続する製品が市場に登場し始めるなど、スマートフォンやタブレットなどモバイルOSを搭載したデバイスと従来のPC OSを搭載したデバイスの垣根は徐々にですが低くなってきています。
Galaxy Foldを手にしたことで、モバイルにおいて嵩張っていたタブレット、筆者の環境でいえばiPad miniがその立場を失いました。
まだExcelなどPCでないとマクロが動かないといった制約もあるためモバイルPCも持ち歩きの必須ではあります。
しかしそう遠くない将来、本当に3in1が実現されるかもしれません。
そういう未来、または夢をGalaxy Foldで見ることができました。
スマートフォンとしてのベストバイは別にあります。
むしろGalaxy Foldは「フォルダブル」や「フォルダブルスマートフォン」の枠に収めてしまうには勿体ないくらい、可能性を感じるガジェットです。使えば使うほど、使いながら使い方を考える楽しさがあります。
スマートフォンという枠を超え、より広義の「ガジェット」の括りの中では2019年で最もおもしろいと感じたためベストバイなのです。
現在もau Online Shopなど取扱店でGalaxy Foldの購入は可能です。
もしモバイルの可能性、未来を感じてみたい人は購入を検討してみてはいかがでしょうか。
なお、本記事はGeekDays様主催の今年のベストバイガジェット Advent Calendar 2019の16日目の記事です。
参加されている複数のブロガーがそれぞれに挙げるベストバイは、自分とは違う評価軸で大変おもしろい玉稿が読めますのでそちらも是非に。