“格安SIM”とか“格安スマホ”とか”SIMフリースマホ”って、結局どんなもの?

2015年、特に賑わったのはiPhoneやXperiaの新モデル、携帯電話各社(MNO)のサービスよりも「格安SIM」「格安スマホ」「SIMフリースマホ」といった、新興勢力ではないでしょうか。
『なんで今更そんな話題を書いているの?』という感じですし、既にあちこちにこれらについてよくまとまったサイトも乱立しています。しかし、あまり筆者としてこの手の話題を書いた事がなかったり、来週末に控えている「めんたいガジェットフェス2」のオープニングセッションへの登壇などもありますので、筆者なりに「知らない人にどう伝えるか」をアウトプットしてみようと思った次第です。
専門用語や、知らないでもいいであろう情報はさっ引き、初心者の方にどれだけ伝わりやすくするかを念頭に置いた、筆者がもしまだ現場に立っていたとしたら…を想定して書いていきますので、細かなツッコミはご勘弁を(w

1. MNO?MVNO?

格安SIM、格安スマホを提供する会社の事を「MVNO」と呼んでいます。
皆さんが普段利用している、または昔から認知されている携帯会社である「NTTドコモ」「au(KDDI)」「Softbank(Y!Mobile含む)」はそれらと区別するために「MNO」と呼ばれています。
店頭、雑誌、Web、様々な媒体で格安SIM・スマホについて調べようと思うと見慣れない文字列として「MVNO」と「MNO」が出てきますが、格安SIM・スマホを提供する会社と、既存の大手携帯会社を簡潔に区別するための略語だと思って頂いて結構です。
本稿でも
 格安SIM・スマホ事業者… MVNO
 大手携帯会社… MNO
と以下に記していきます。

2. MVNOはどうやってサービスを提供しているのか

「ドコモと同等品質!」「エリアは大手通信会社と一緒!」など、ここ最近出てきたサービスの割に「繋がりそうなイメージ」で宣伝されていることに疑問を持つ方も多いでしょう。
全国にアンテナを設置して携帯電話サービスを提供するには億、兆のお金がかかりますし、それを維持していく・改善していくにも莫大なお金がかかってきます。
この短期間の間に様々な会社がMVNOとして格安SIM・スマホを提供できる裏には、MNOのアンテナ・設備・回線、面倒くさいので今回はこれらを「インフラ」と呼んじゃいますが、既存のインフラを借りて提供を行っているからです。
例えばドコモのインフラなどを借りるということは、ドコモが敷設したエリアでは使えるということになります。

3. MVNOはMNO同等なのか

さて、前述の通りMVNOはMNOが全国に敷設したインフラを使うという事は「繋がるエリア」はドコモと一緒です。
しかし、通信速度については遅くなる傾向にあります。
筆者に絵心がないため、また、目の前にブギーボードやコピー用紙を束ねたバインダーもないため、読者の皆様の頭の中でイメージして頂ければと思うのですが
・三車線道路
・二車線はMNOで使う
・一車線はMVNOに貸し出して、皆でわけあって使う
という仕組みです(凄い極端な例えですいません。
MNOユーザーよりも限定された中を更に皆で分け合うため一人当たりのパイは減りますから、どうしても速度は遅くなる傾向にあります。もちろん、時間帯、場所、どのMVNO事業者か、様々な要因で速度も変わりますので「圧倒的に遅い」とか「使い物にならない」とは言い切れませんし、こうしたサービス提供の特性を生かした「速度制限はあるけど、容量制限はない定額制」の格安プランなどを選べるMVNOもあるというメリットもあります(詳しくは後述)

4. SIMフリーと格安SIMは違うモノ?

ここを混同している人が多いんですよね。ハッキリ言います、違うモノです。関係ありません。
「SIMフリー」は原則、どの会社のSIMカードを挿入して使用できる携帯電話です。
「格安SIM」は様々な会社が自由に料金プランを設定し提供する通信サービスです。
どちらも「自由」という部分が共通しており、混同している人が多いのかな?と筆者は考えています。

ただ、このSIMフリーの携帯電話にも弱点があります。
通信会社(MVNO、MNO問わず)によって通信方法(方式や周波数)が違うので、SIMフリーの携帯電話が自分の使いたい通信会社の通信方法と合致しなければただの置物になってしまいます。
「SIMフリーの携帯電話だから、もう怖い物なし!」というわけではないんです。

5. MVNOが使える携帯は?

MVNO各社で提供形態はほぼ同じです
1) SIMカードだけを購入する
2) スマートフォン本体と一緒に購入する
の2種類から選ぶようになっている事が多いです。
2) を選択した場合、MNOで携帯電話を契約・購入するのと同じです。
1) を選択した場合、少々専門的な知識が必要となる場合があります。詳しくは以下。

Case1. 元々使っていた携帯電話を使う

“2. MVNOはどうやってサービスを提供しているのか”で説明した通り、MVNOは既存MNOのインフラを借り受けサービスを提供しています。
「元々ドコモを使っていて」「選んだMVNOがドコモのインフラを利用している」場合、新たに提供されたSIMカードに差し替えるだけで準備完了です。

Case2. 新たに本体を購入する

2) のように、MVNOがSIMカードとセットで販売している機種を購入する方法もありますが、それ以外にも「中古の携帯電話を購入する」とか「SIMフリーの携帯電話」を購入するといった方法もあります。

[1] 申し込んだMVNOがドコモのインフラを利用している場合
素直にドコモの中古の本体を購入すれば大体使えます。

[2] 申し込んだMVNOがauのインフラを利用している場合
上記同様、auの中古の本体を購入すれば大体使えます。

心配であればゲオモバイルのような中古の本体を販売する大手で「選んだMVNO」を伝えれば、組合せとして問題のない機種を案内してくれます。その場で決めないでも使える機種さえわかれば「ヤフオク!」だとか、中古の本体を購入する方法は色々ありますので。
SIMフリーの携帯電話についても同様で、使用したいMVNOさえ決まっていれば家電量販店などで店員さんに確認すれば大体間違いはありません。

Case.3 元々使っていた携帯電話をSIMロック解除する

機種によっては「SIMロック解除」の手続きを行う事で、ドコモ・au・Softbank・Y!mobile以外のSIMカードを使えるようになります。
例えば…
「今はドコモのXperiaを使っている。機種に不満はないけど、料金が高く感じたのでMVNOに変えたい。変えたい先のMVNOはインフラにauを利用しているけど使えるんだろうか」
といった場合ですね。
実際、自分が使っている機種がSIMロック解除できるのかどうかは各社のホームページで調べることができます。

●ドコモ
SIMロック解除対応機種 | お客様サポート | NTTドコモ ※〜2015年4月末まで発売の機種
SIMロック解除対応機種および対応周波数帯 | お客様サポート | NTTドコモ ※2015年5月以降に発売の機種
●au
SIMロック解除が可能なau携帯電話などの実装周波数帯一覧 | auお客さまサポート

●Softbank
ソフトバンクの携帯電話を他社で利用する / SIMロック解除 | お客さまサポート | モバイル | ソフトバンク

●Y!mobile
SIMロック解除の手続き|各種お手続き|サポート|Y!mobile(ワイモバイル)
対象機種一覧はこちら (PDFファイルです、開く際ご注意ください)

ロック解除の手続きですが
・原則、購入から半年以上経過していること
が条件となっています(一部例外もありますが)
また、ドコモショップなど携帯会社のショップで解除を行う場合には手数料として3,000円(税抜)がかかりますが、機種によってはWebからの手続きを行った場合に限り手数料かかりません。
例外としてドコモとSoftbankの2015年4月末以前に発売された機種はショップ店頭での手続きとなり、前述の手数料が発生します。

また、中古で購入した本体についてはロック解除できないものもあります。
Case.2 の方法で中古本体を購入し、SIMロック解除を行おうと考えている場合は事前に確認しての購入をおすすめいたします。

ただし、SIMロック解除を行う=SIMフリーの携帯電話となったとしても、上に書いた通り「通信会社(MVNO、MNO問わず)によって通信方法(方式や周波数)違う」ので、確実に使える保証はありません。SIMロック解除の手続きの際に使えなくても助けませんよ、と強く念押しされるくらいですので、しっかりとした下調べをしてからSIMロック解除という選択をした方がいいでしょう。

5. MVNOの料金プラン

MVNOにも様々な会社、様々なプランがあります。
だいたいの会社で提供されるのは
・音声通話+データ通信
・データ通信のみ
・データ通信のみ(SMS送受信可)
の3つでしょう
MVNOならではのプランとして
 ・容量制限はあるけど、その時点で最大速度で通信を行う
 ・速度制限はあるけど、月額は完全に定額、使い放題
という、データ通信のプランに選択の幅が設けられている会社もあります。
また、音声通話はMNOのような「カケホーダイ」「通話定額」が提供されないため、通話のできるプランを選択する場合は30秒or1分あたりの通話料に気をつけて頂き、利用する際にも注意が必要です。
中には独自のIP電話サービスをセットにし、通話料を安くする、または定額制として提供している会社もありますが、通話品質が決していいとは言い切れませんので通話の多い人に筆者はあまりオススメはしていません。

また、これらのプランは
・月単位、年単位の自動更新で、料金は引き落とし (ポストペイド型)
・容量単位の買い切り、使い切った際はチャージ or 買い直し(プリペイド型)
から選べる場合もあります。
出張や引っ越しなどで一時的にネット回線に困った際に「Wi-Fiルーター」などと組み合わせて使うとか、バイト代・お小遣いの範囲内で少しでも多く通信の出来るサービスを探している場合、MVNOが提供するプランは魅力的なものが多いとも言えます。

6. MVNOは何処で買えるのか

MVNOによってまちまちですが、最近は「家電量販店」など店頭購入可能な会社が増えてきています。
中には携帯会社(MNO)のショップのように、その場で手続きを行い、セットアップまで行ってくれる場所も出てきました。
一例として
ビックカメラ BIC SIMカウンター
5月14日(木)、マルチメディアAkibaに業界初のモバイル関連のサービスカウンターを開設いたしました
mineoアンテナショップ | mineo(マイネオ)
格安SIMのMNP即日開通|格安SIMの販売|ゲオモバイル
などがあります。
各社かなり力を入れており、店頭購入できる拠点はこの一年でかなり増えました。

また、今までの主流としては「各社のWebサイトで購入・手続きを行う」方法です。
ネットで銀行口座を開くとか、それこそ通販サイトを利用した事がある人であればそんなに難しくはないと思います。
チャット、または通話で親切に購入相談が行えるようなサービスも無料で提供されていますので、店頭に行くのが難しい人は「ネットで買うのは難しそう」と諦めてしまうより、思い切ってこうしたサービスを使ってみてはどうでしょうか。

その他、SIMパッケージを購入し電話・Webでアクティベーション(開通作業)を行うなど方法は色々ありますが
1) 専門カウンターに行く
2) 公式サイトからのWeb申込
3) パッケージ購入からのアクティベーション作業
という順ですね、オススメは。

なお、MVNOによって申込に必要な書類が変わってきます。
・現住所記載、有効期限内の運転免許証
・クレジットカード
・購入に必要な現金
があれば大体大丈夫ですが、もしこの中で足りないものがある場合事前に確認した方がいいでしょう。
本人確認書類はパスポートや住民基本台帳カード、保険証などで代用できる場合もありますが、一緒に「住民票」が必要になるケースや、クレジットカード払いではなく口座振替を希望する場合、届け出印が必要になる…などなど、通常の携帯電話の申込同様に必要書類が多数ありますのでご注意下さい。

7. 今まで使っていた携帯電話番号は引き継げるのか

はい、引き継げます。
音声通話に対応したプランを選ぶ場合、今まで利用していた携帯電話番号は引き継げます。
MNO同様にMNP(携帯電話番号ポータビリティ)を行うことで引き継ぐことができます。
その際「今まで使っていたメールアドレス」や「貯まっていたポイント」は引き継げないとか、手数料・解除料が発生するのも一緒です。
「5. MVNOが使える携帯は?」の「Case.3 元々使っていた携帯電話をSIMロック解除する」についても、MVNOへの電話番号引き継ぎが完了した時点でSIMロック解除の手続きが行えなくなることもありますのでご注意ください。

また、電話番号の引き継ぎについて「6. MVNOは何処で買えるのか」でご紹介した「店頭カウンター」であればその日で手続きが完了し、携帯電話の不通期間が発生しません。
Web通販の場合、会社によっては不通期間が発生する場合もありますのでご注意を。
最近になって商品到着後、自身で切り替え作業を行う事で回線の切り替えを行うので、不通期間が発生しないという有り難い仕組みを利用できる会社も出てきています。申込時、MNPを選択すると不通期間の発生の有無や切り替え方法について注意事項が出てくるはずですので、読み逃さないようご注意ください。

8. すぐ使えるの?設定は面倒じゃないの?

心配だったら店頭カウンターへ…!!
…と投げてしまうのもアレですが、そこまで難しいことはありません。
だいたいの会社がカラー印刷された設定ガイド(iPhone・Android両対応)を同梱して送ってくれますし、店頭で購入した際にも電話機本体の初期化時は自分で再設定が必要になるので、こうしたガイドブックがもらえるはずです。
どんな電話機にもある「設定」のアプリから、何個か項目を選択・入力するだけですぐに使えるようになりますから安心してMVNOを申し込んでいいと思います。

9. これだけ説明して、結局格安SIM・格安スマホってなに

まとめです。

格安SIMとは

既存の携帯会社(MNO)の設備(インフラ)を借り受け、独自の料金プランを提供する通信会社のこと。
携帯電話に挿入する「SIMカード」を、入れ替える事で「安い料金で通信が可能になる」ので「格安SIM」と呼ばれている。

格安スマホとは

格安SIMカードに入れ替えた事で、月額料金が安価になったスマートフォンの事。
または、本体代金そのものが安く、月額料金までコミコミにして大手携帯会社に比べ安価に使えるスマホのこと。

…といった感じでしょうか。
MVNOの鍵は「SIMカード」であり「格安スマホ=安かろう悪かろう」ではありません。
もちろん、格安SIM・格安スマホの導入に際して
・速度が遅くても安いモノがいい
・本体も新品、中古問わず安価なものがいい
と予算に制限を設ければ設けるほど「格安スマホ」にもなりますが、通信も遅ければ電話機の動きも遅くなりますので「悪かろう」が出てしまう事もあると思います。
要するに、どういう組合せをするか、賢く使えるか、というのが世間を賑わす格安SIM・スマホの核心でしょう。

冒頭に書いた通り、筆者が店頭でお客様に説明するのなら、これくらいは説明するよ、または皆さん疑問に持たれているのはこのあたりだろう…と勝手に推測して書きまとめてみた次第です。
これだけ格安SIM・スマホ・MVNOが盛り上がった期間に現場に立っていませんので、今現役で立たれている方や既にこれらを活用している方に「それは違う」「内容が足りない」と思われてしまうかもしれませんが、これらについて「疑問」「質問」を抱えている人の役に立てば幸いです。

ではでは。

※最近人気のあるMVNOはこのへんでしょうか。

●ドコモ系

●au系

●au、ドコモ、どっちも選べる